いは漆黒《しっこく》の闇夜ででもあれば見落しということもあるが、曇って七ツ下りではあるが、晴天白日に、地球の全陸地を合わせて三倍したほどの面積を有する海というものを見落したということは、言いわけにならない。
正直な米友が、またまた擬議狼狽してしまいました。
「海のことは気がつかなかったねえ」
「そうですか。あなたは、どちらまでいらっしゃるの」
「名古屋へ帰《けえ》りてえと思うんだ」
「名古屋へ、では後へお戻りなさるんですね」
「え――」
ははあ、ここがいわゆる、鳴海のうちとすれば、名古屋へ行くのは後戻り……つまり自分というものは、宮の渡し場から、ふらふら歩きで鳴海へ来てしまったのだ。鳴海で止まったからよかったけれども、このまま方針をかえなければ江戸まで行く……たとえ一里半とはいえ、自分が逆行したことを、はじめてさとらしめられたようです。
この時、不意に屋根の上に声があって、
「あんた方、海が見たければ、千鳥塚までいらっしゃい、千鳥塚なら、海がよく見えますよ」
二人が驚いて、言い合わせたように屋根の上に眼を向けると、そこに一人の老人が首を出していました。
米友は、それを一目見て
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