た米友が応答に窮してしまいました。
実は、鳴海という固有名詞であびせかけられたのに、先手を取られてしまった形で、彼はこの時まで、地名ということに、全く白紙でおりました。そこへ、先方から鳴海と聞かれてしまって、自分の書くべき文字が無くなってしまったという形です。
「おかみさん、ここはいったい、何というところですか」
笑止千万、先方から礼を厚うして、尋ねられた相手に向って、脆《もろ》くもこちらが兜《かぶと》をぬいで、白旗を立てたような有様で、器量の悪いこと夥《おびただ》しい。
「まあ、お前さん、ここの土地の方ではないのですか」
「はあ、見たらわかるでしょう、おいらは旅の者なんだ」
「そうですか、それは失礼いたしました。実は、ここは鳴海の土地と聞いておりますから、昔から有名な鳴海潟を見物しようと思いまして、こうして宿を出て来るには来ましたが、いくら行っても海がないのに、誰に聞いても、鳴海潟を教えてくれないものですから、困りました。このお寺へ行ってごらんなさればわかるかも知れない、と教えてくれる人がありましたが、やっぱりわかりません」
婦人がこう物語りましたので、米友が元気づきました。自
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