道を順に戻ろうというのでもなし。
 その昔、机竜之助が半明半暗の道をたどって、東へ下ったそれ――
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「江戸へ八十六里二十町、京へ三十六里半、鳴海へ二里半」
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と書かれた道標の文字、そんなものも眼中には入らず、ただ、あられもない方へ、横っ飛びに飛んで米友が走りました。
 横っ飛びに飛んでも、到底人間の至りつくすところの道はきまっている。人里が尽くれば原、原が尽くれば山、大きな川か水があって、それが尽くれば、その先はまた地続き、そうして、ついに行きとまるべきところは海――
 日本の国は四方が海だから、米友の足を以てしても、幾日か飛ばし通しに飛ばせば、四海のうちのいずれかへ行き止るにきまっている。
 幸いに、その行止りが存外早いことでありました。
 当人は、どちらへいくら走ったか知らないが、ものの二里とは行くまいと思われる時に、パッタリと、またも一つの海に当面してしまいました。
 海に当面して、右か、左かの思案を、きめねばならぬ境遇に立たせられていることをさとりました。右か、左かの思案をきめる前に、ここはどこの地点? ということを知っておく必要も
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