、波止場から海へ身を投げてしまっていたでしょう。身を投げるのではない、海へ落ちこんでしまったでしょう。そうして、この海をかち[#「かち」に傍点]渡りするか、泳いでか、とにかく、いま出た船を追いかけて乗るつもりであったでしょう。幸いに後ろに船頭があって、もうちょっとというところで、米友を抱き留めることができました。
「危ねえ――若衆」
 つかまえた船頭も、この若者が身投げをするとは見なかったでしょうが、まさしく身体《からだ》の中心を失った途端を、見てはいられなかったでしょう。
 危うく溺没を救われた米友は、
「ちぇッ」
 舌打ちをして、踵《きびす》を返すと、あられもない方へ、走り出しました。
「おかしな野郎だなあ」
 船頭が呆気《あっけ》に取られる。身投げをする柄でもないようだし、そうかといって、捨てて置けば海へ落っこちるところを助けてやったお礼も言わず、かえって、「ちぇッ」と舌打ちを一つして、そのまま、あられもない方へ、とっとと走り出した若い者の挙動を見て、呆《あき》れ返らないわけにゆきません。
 そこで、米友は、全くあられもない方へ走り出してしまいました。
 宮から名古屋へ、もと来た
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