《めいび》をうたわないで、いかになる身にかけて来る。鳴海の字訓そのものが、歌人の詠嘆を迎えるようになっているかも知れないが――鳴海そのものにも、眇《びょう》たる人生のはかなさを教えるものがあるに相違ない。
お銀様はどうかして古えの鳴海の海を見たいと思いました。鳴海潟に啼《な》くという千鳥の声を、飽かず聞いて帰らないではおられない心持になって、それで、いずくともなく鳴海を求めて歩き出しているのです。
五十二
この際、名古屋にいた宇治山田の米友は、まっしぐらに宮の七里の渡し場めがけて走っている。
名古屋を後ろにして、やや東へ向いて走るのです。
その眼の中には焦燥はあるが、それは軽井沢の時に、主人を見失った責任感から峠を走《は》せ下った時の呼吸とは違います。
波止場に立った米友は、ちょうど、いま立ったばかりの七里の渡し舟をめがけて、
「おーい、よっちゃんよう」
俊寛もどきに舟を呼ぶ。呼べば答えるの距離は充分にある。
「友さんかい」
船ばたに現われた女人の一隊。その中でも一人が領巾《ひれ》をふる。
「よっちゃん――一足で後《おく》れっちゃったよ」
米友が叫
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