ぶ。舟の中の女、
「ほんとに惜しいことをしたねえ、米友さん、もしかしてお前の姿が見えるかと、どんなに待っていたか知れなかったのよ」
「そうだろうと思って、一生懸命にかけて来たんだが、どうも、地の理がよくわからねえもんだからな」
「ほんとに残念だけれど、さよなら」
「さよなら」
「友さん――」
「おーい」
「お前、帰りには、きっとお寄りね、四日市で待っているからね。昨日話したろう、あの通り言って四日市をたずねて下さいね、待っているから、きっとよ」
「うーむ」
「嘘ついちゃいやよ」
「うーむ」
「そうして、それから二人で、間《あい》の山《やま》へ行ってみましょうよ、昔の人に逢ってやったら、さぞ驚くでしょう」
「うーむ」
「先生様にお願い申して、きっとお寄りよ」
「うーむ」
「帰りでいけなければ、お前、行きにお寄りな――ほんとうは、こっちから京大阪へ出る方が順なのよ」
「うーむ」
「じゃあ、きっとね、帰りにね」
 こう言っている間に、舟は、隔たって行く。米友は、どう足ずりしても甲斐のないことを知る。
 このところ、佐用姫と俊寛の生き別れ――波止場に棒の如く突立っている米友は、またまた死んだ者
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