年をして、ついこんな抜かりをしでかすなんて、愛想がつきたものさ、ここを押せばここがハネるくらいのことを、御存じないお角さんじゃないのに、ちぇッ、いやになっちゃあなあ」
こう言って、お角は、焦《じ》れったがって、お銀様の前で使う、あそばせ言葉とは全く違った地金の棄鉢を見せました。
だが、その地金の棄鉢も、今日は、周囲に当り方が軟らかいのは、つまり、焦れったがりこそするが、その失策の責めは、誰にあるのでもない、自分にあるのだ、この年甲斐もないお角さんというあばずれが、存外甘いところを見せちゃった、そのむくいだよ――
お角のように、目から鼻へ抜ける女にとって、お銀様のここにいないということの、心理解剖ができないはずはありません。
美少年と、無遠慮に駕籠《かご》に相乗りをして来たこと、宿へ着くと早々、お銀様を閑却して、かの美少年と長時間水入らずの会話をつづけたこと、この二つがお銀様の、あんまり曲っていないつむじを、曲らしむるには余りあること。
それをいまさら気がついたから、お角は、自分の甘ったるさ加減を、噛んで吐き出してやりたいほど腹立たしくなったに相違ありません。
お銀様が誰に
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