てしまいました。

         五十一

 そんなことで、この一行は、その晩は鳴海《なるみ》へ泊ることになりました。
 強行すれば、宮か名古屋へは着けないではなかったが、万事この方が余裕があってよいと思ったのです。それに、鳴海、有松絞りといったようなところと、品が、女だけに、この一行を引きつけたのかも知れません。
 宿へ着いて――お角は、例の美少年を上座に招じて、委細の物語を聞きはじめました。
 その語るところによると、岡崎藩でも武術の家に生れ、去年のこと、朋輩《ほうばい》と口論の末、果し合い同然のことをやり出し、相手を傷つけて死に至らしめたが、表面は穏便《おんびん》につくろっておいてもらったけれど、今後の場合、かりにも刀を抜くような振舞がある時は容赦せぬ、との厳しい父の言いつけを蒙《こうむ》っていたこと。
 しかし、天性、利発で、侠気があって、腕が優れているというところが、どこまでも祟《たた》るらしい。
 今度も、昨日の名古屋者のために、かりにも自分の藩中の者が、大恥辱を曝《さら》して帰ったということを聞き、それが自分の友人関係でもあり、一藩の恥辱にもなるという義憤が燃え、そう
前へ 次へ
全514ページ中384ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング