、ちょうど、赤坂口と藤川口とが落合うあたりの辻のところで、
「喧嘩だ、喧嘩だ――」
 それ見たことか。見ているまに、黒山となった人だかりが容易に崩れないのは、喧嘩のたちが悪くなったに相違ない。
 当然、行くべき道筋、お角さんの一行は、いやでもその場へ通りかからねばなりません。喧嘩の売り方は言うまでもなく、さいぜんの生酔いの二人の若ざむらいで、それを買ったのは、町人風であるらしい。
 その町人の後ろには、男の連れが三人ばかりあって、これが、町人に応援している。この町人の一行はかなり贅沢《ぜいたく》な身なりをして、垢抜《あかぬ》けのしたところ、どうもこの辺の小商人《こあきんど》とは見えない。そうかといって、しかるべき大店《おおだな》の旦那とか、素封家とかいうものとも見えない。女郎屋の主人とか、料理屋の亭主とかいったような感じの男であって、それにつき従う二三の者も、その身内であったり、従者であったりするらしい。さればこそ、売られた喧嘩を買っている。普通の金持ではやすやすと、売られた喧嘩を買いはすまい。
 この町人の一《いち》まきはそれだけではない、後ろを見ると、十余名の芸妓、雛妓《すうぎ》の
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