軒端をめぐって滝の下を行ったものだから、提灯の隠見することだけが見えたのが、今度は直《じ》きに小坂を上って来るものですから、それで明らかに提灯も、その主もわかったものです。
そうして、それがなお一歩一歩と近づくのを見ているうちに、足の歩みのたどたどしいのも道理、この提灯の人は、片手に鏡のような水を満たした手桶を提げている、ということが明らかとなりました。
ああ、水汲みにいったものだ、軒下に貯えの水がなくなったから、わざわざ谷川まで水を汲みに行ったものだ。そうだとすればなにも、恐怖も物怪《もののけ》もあるべき筋ではない。月は明るいけれども、足許の用心のために特に提灯を用意したまでのことだ――とお雪も、やっと合点がゆきました。
けれども、なお残る不審は、どうしてこの夜中に、わざわざ谷川まで水を汲みに行かなければならなくなったのだろうという事、どなたかが勉強のために夜ふかしをして、お茶が少し上りたくなって、茶釜を見たが水が無い、瓶《かめ》を見てもあいにく――外の筧《かけひ》は氷っている、やむを得ず、谷川まで御苦労をしたと思えば思えないこともない。多分、そんなことだろうと想像しておりまし
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