上に置かれた人の手。
「まあ、先生」
お雪の肩に後ろから手を置いたのは、机竜之助でありました。
肩に手を置かれるまで、どうして、どちらから歩み寄って来られたか、それがわかりません。ただ、不意に襲うて来た手の主が、さる人であったから、ようやく落着きました。そうでなければ、いつぞや、仏頂寺のために、目かくしをされた時よりも、もっと怖れたかも知れません。
それでも、息がハズんで、
「ちっとも存じませんでした」
返事をせずに竜之助の、お雪の肩に置いた手はようやく深くなって胸のあたりに襲うて来ると共に、その胸が自分の背を圧迫して来るのを感じます。
お雪は、いったん、落ちついたが、それからまた胸の轟《とどろ》くのをとどめることができません。
それは、どうもなんとなくこの人の挙動に、圧迫を感じるのと、ちょっと振返って見た途端に、右の手を自分の肩にかけ、左の手には刀を提げていたからです。
それは、ちょっと合点《がてん》のゆかない呼吸でありました。
それでも、圧迫をのがれようという気にもなりません。
「なんて、いい月夜なんでしょう」
と言いました。
「寒いことはない?」
と、深く胸に腕を
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