出るには明りはいりません。ところはこの場合ですから、遠方より行きつ戻りつすべき場合でもありません。
これが闇の夜ならばとにかく、皎々《こうこう》たる満眼の月夜であるだけに、お雪は物凄いと思いました。
誰だろう、今時分、何しに……と疑いながら幻想をくずし、眼をみはって、その人を見たしかめようとしたが、三階の高さから朦朧《もうろう》としてわからず、かえって、人が無くして提灯のみが浮き出して歩き出したようです。人魂《ひとだま》かなんぞのように、ふらふらと宙に迷って、提灯だけが月夜に浮き出したもののようです。
それで、お雪ちゃんは、ほとんど身の毛をよだてた[#「よだてた」に傍点]ものです。
一旦、軒下から、ふらふらとさまよい出した提灯は、軒をめぐって消えてしまいましたけれど、しばらくして、また現われ、小径《こみち》をたどって、あちらに、ついどおし道の方へとさまよい行くもののようです。
幻想を恐怖に破られながらお雪は、その提灯から眼をはなすわけにはゆきません。
その時、不意に後ろから音もなく、自分の肩の上に落ちて来たものがあります。
「あっ!」
と振返れば、和《やわ》らかに自分の肩の
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