しょう。それも、冬がようやく迫って来るほど、昼よりも宵、宵よりも、この深夜の月の澄んだ時ほど美しさが増して行く。
今は、どうでしょう、人去り、時更けて、この骨まで凍る白骨谷のつめたさ。
この美しい、つめたさを、自分ひとりだけがながめつくす特権がうれしい。冬籠《ふゆごも》りをする人だけに、この広寒宮《こうかんきゅう》のながめが許されるのに、お気の毒なのは、せっかく、許された特権を抛棄《ほうき》して眠っている人たち。
起して見せてあげたいが、そうしない方がよい。慾ばりのようだが、これだけは、わたし一人占めにして、誰にも見せないことにしておきましょう。
先日も、このことで、弁信さんへの手紙を書いたことでした。
その手紙の中に、白骨谷の深夜の景色に拙い描写を試みた後、こんなことを書き伝えた覚えがあります、
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「弁信さん――
風景というものは、人間に見せるために出来ているものではないということが、このごろになって、やっと、わたしにわかってきました。
今まで、私は、美しい花だの、キレイな鳥だの、屏風《びょうぶ》を立てたような山や、波のように音を立てて流れる川、みんな
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