、自然――が人間をなぐさめてくれるために出来ているものとばかり思って、それとお友達になったつもりで慰められて来ましたが、このごろになって、ようやく、本当のよい景色は、人間のために作られているのではない、ということがよくわかりました。
冬になっての、夜更けての、白骨谷の景色というものの、美しさを、弁信さんにひとめ見せてあげたら、きっと、わたしの言うことをわかって下さいます。
毎年、夏から秋にかけましては、白骨へ入湯に来るお客もたくさんございますけれども、冬の白骨を知っている人はないのです。知っている人があっても、冬の夜更けての白骨谷に、こうまであこがれているのは、古来――(ずいぶん大きな言い方ですけれども御免下さい)わたしひとりだけなんでしょう。
冬が深くなり、人が絶えてくるほど、景色はよくなって参ります。
まして――これから上の乗鞍ヶ岳や、穂高ヶ岳や、槍、白馬、越中の剣山の上あたりの今夜の月の景色は、どんなでしょう。それはただ想いやるばかりで見ることはできません。わたくしに見ることが許されないだけではなく、人間というものには、誰にも許されないところに、いよいよ本当の美しい景色が現わされ
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