画題で、また一つ、この群生動物を中心に一大画幅をつくってみようとの、画興が油然《ゆうぜん》として起るのを禁ずることができない。
画題は有り余る! 彼はかく感ずる瞬間の自分というものを、限りなく果報に感じ出してきた。おれも貧乏に於てはかなり人後に落ちないが、斯様《かよう》な富の豊富無尽蔵を感じ得る頭脳だけは、無類の幸福者といわずばなるまい。
人は技の拙なるに患《わずら》いする、材の取り難きに苦心する、もしそれ画題の陳腐を厭《いと》うての筆端の新鮮なるを希《ねが》うに至っては、万人の画家が、ひとしく欲しながら、ついに粉本《ふんぽん》を出でることができず、前人の足跡より脱することができないのに、こうして、足一歩――ではないが、十里百里と興に馴れて自然そのものに直接に没入して行きさえすれば、自然は惜気もなく、その無尽蔵を開いて、永遠の画題を我等に与うるのだ。
「おれは仕合せ者だ!」
白雲は、こういう瞬間には、かく自分の身の恵まれたることの讃歌を、誰はばからず絶叫するの稚気を有している。
この稚気が存する間、妻は病床に臥すとも、子は飢えに泣くとも、存外、のんき千万で生きて行かれる!
「あ
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