に、眼からポロポロと落ちる水滴は、その以後と区別した嬉し涙というものの一滴だろうとは受取れる。
こうして見ると、泣くことは泣くが、食うことも食う。見るまに大きな一皿を平げて、なお物欲しそうな色が残る。泣くことと、食うことは別なのであるように見える。泣くべき時には、泣けるだけを泣き、食うべき時には、食うだけを食うという分業組織が、この男にはかなり規律正しく使い分けられているように見える。
日本人の普通に見るように、泣くべきほどの事があるから食事も進まないの、胸が塞がって飲むものも飲まれないのというような、物と心との混線作用はないらしい。
だが、この際は、金椎も食うだけ食わせることをしないのが、かえって合理的だと思ったのでしょう。右の一皿だけを提供し終ると、あとは節制を与えて物質の補充を追加しないのが、この際相当の処置と思ったのでしょう。
そこで、食うことがこれ以上許されないとすれば、これからまた号泣の中断を続けるの段取りとならなければならぬ。
果して、金椎が立去ったあとで、哀号の声がしきりに起りました。
その哀号を遠音に聞きながら、駒井甚三郎は人間の本能性の底の知れない不検束
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