は悪いのか知ら」というようなことを口走って、駒井を悩ませた、あの病気であった当時のこと。
今となってもなお、自己の貞操に加えられた極度の侮辱乱暴を、無条件に許してしまいたい心持が残っているとは浅ましい! 歯痒《はがゆ》い!
酒に狂暴性を煽られた人間の野獣性と、それに憎悪と、制裁を感じ得ない、麻痺した貞操心! 忌《いま》わしいものの極みだ。
外国人を、毛唐といって、人間以下、獣類同格に置くのは、時勢に盲目な尊王攘夷連だけではないが、おそらくそれが事実か。人間よりは獣類に近い毛唐め!
駒井としては、珍しくもこの時に、極端な憎悪と、昂奮とを感ぜずにはおられなくなりました。
その憎悪と、昂奮とを強《し》いて冷静にして、雨の半日をともかくも研究に没頭し、正午の合図があった時に食堂へ出て見ると、金椎、茂太郎はお行儀よく待っていたが、もゆる子の姿の見えないことは、朝と同じです。
「お嬢さんは、まだよくなりません、熱が出ましたから、もう少し休ませていただきたいと言っていました」
茂太郎が代って申しわけをする。
「熱が出たか」
「でも元気で、時々歌をうたったりなんかしています」
「そうか」
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