れないわけにはゆきますまい。
その時分に、時計の二時が鳴る。
ああ、もう二時だ、丑三時《うしみつどき》だ、寝なければならぬと気がついた時、ふと思い出したのは、酔いどれのマドロス氏のこと。
捨てておいても大事はないと信じているが、それでも気にかかる。
あいつは憎めない男だから、傍へ置いてみたが、今は単に愛嬌者としてでなく、実用の上に無くてはならぬ男になっている。
彼は、下級労働者ではあるが、外国の事情と、航海の知識等については、経験上から珍重すべきものを持っている。本は読めないが、言葉を研究するには、悪い参考とばかりはならない。それのみならず、船乗りとしての生活の前には、到るところを渡り労働者として歩いているから、何かと経験もあり、小器用でもあって、時には信じ過ぎ、買いかぶって苦笑いに終ることもあるが、大体に於て、この男から得るところのものは、決して少なくないことになっている。
現に――すでに、機関の方の目鼻があいてみると、次に当然|来《きた》るべきものは、燃料の問題でなければならぬ。
そこで、駒井甚三郎は、一方天文を研究して船の航路学の準備をすると共に、地質をたずねて、石
前へ
次へ
全514ページ中287ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング