るところを、今は全く閑却しているものですから――茂太郎の歌が、そこでひとたび途絶えました。
やがて、暫くあって、一段高いところで、一段のソプラノが起るのを聞きました。
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西は丹波カラサキ口
東は伊賀越えカラサキ口
和田の岬の左手《ゆんで》より
追々つづく数多《あまた》の兵船《ひょうせん》
[#ここで字下げ終わり]
眼鏡に吸いつけられていた駒井甚三郎が、この声で、驚かされて見上げるところ、台の上からなお高く立てられた番所の旗竿のてっぺんまで、この子は上りつめて、そこで般若の面は頭上にのせたまま、片手で、しっかり旗竿につかまり、片手は播磨屋《はりまや》をきめこんで小手をかざして海のあたりをながめているのは、多分、江戸へ見世物にやられた時分、どこかの楽屋で、見よう見まねをしたものの名残《なご》りかと思われる。それを仰いだ駒井は、
「あぶない、降りておいで……」
「はい」
返事はしたが、茂太郎は急には降りて来ようとしない。急に降りて来ないのみならず、なおこの旗竿に上があるならば、上りつめたい気持らしくも見える。百尺の竿頭を進めるという言葉は知るまい。知っているとも、
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