あれで分別盛り、べつだん高上りをしているわけでもないが、四十八貫目の泥棒は骨だろう、あいつも小力《こぢから》はありそうだが、四十八貫目では、ちょっと持ち出せまい、危ねえものだテ……」
主膳は、憮然《ぶぜん》として、七兵衛の立去ったあとを見ていると、七兵衛が立去る時に合羽の裾で揺れた牡丹の葉が、まだ一生懸命に首を振っている。
三十七
駒井甚三郎は、今晩、遠見の番所の附近へ新たに立てたバルコン式の台上にのぼって、天体を観察している。
駒井が、天体を観察するの余裕を得たことは、それだけ、海と船との事業が滞りなく進捗している証拠であります。さりとて、海を行く者が天を観ることは必須であります。駒井が天文の趣味と、天体の観察は、今に始まったことではないが、船の方の工事に、すっかり安心が出来た故にこそ、今度はこうも落着いて、専門的に天を観ることに取りかかったその態度、空気は容易《たやす》く見ることができるのであります。
事実、駒井のこのごろは、船の工事の監督が三分の、天文の研究が七分といってもよいほどに時間を割《さ》いているのです――無論、昼は天文学と共に相関聯した航海
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