召《おぼしめ》しで、名古屋が、何につけても、いちばん安全だというところから、そんなことになすったという説もございますが、太閤様の御威勢でおこしらえになった贅沢品《ぜいたくひん》という贅沢品がすぐって、あの尾張名古屋の城に入れてございますようですから、たいしたものでございます。外へ出ている金の鯱ばかりが名物ではございません、お城の中には、今いった千枚分銅をはじめ、宝という宝が腐るほどうなっているんだそうでございます。そこでこの七兵衛もまた出直して、尾張名古屋へ当分根を生やそうかと思いまして、それで、ちょっと、お暇乞《いとまご》いに上ったようなわけなのでございます。これはお土産のしるし……」
と言って七兵衛は、保命酒のようなものを一つ取り出して主膳の前に置き、そのまま、風のように、さっ[#「さっ」に傍点]と出かけてしまいました。それを、あっけに取られて見送っていた主膳が、
「相変らず忙しい男だ、お土産を持って到着の挨拶に来たのだか、出立の暇乞いに来たのだかわかりはしない、羽の生えている奴にはかなわねえ、尾張名古屋への往復が、芝金杉へ行くような調子なんだから。だが、危ねえもんだなあ、あいつ、
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