し上げてはなんだが、当時惰弱の公方様《くぼうさま》に任せておいては、多分、その一つさえ元も子も無くなってしまやしないかと、こう思いますから、そいつを一つ、ちょろまかして、世間が鎮まるまでどこぞ深い山奥へでも隠して置いたら、どんなものかと、そんなばかな了見で、仕事にかかったものでございます。それでもまあ、苦心の甲斐があったというものか、ようやくこのごろになって、その一つだけは、その目方と、在所《ありか》だけは朧《おぼろ》げながら突留めて参ったという次第でございます」
「そうか、さすが蛇《じゃ》の道だ、拙者共の伝手《つて》で、どうしても要領を得なかったものを、お前の働きであたりがついたとは感心だ。いったい、その代物はどこにある?」
「その一つは、たしかに尾張名古屋の城の、御宝蔵にあるとこう睨《にら》みました」
「名古屋の城に――」
「はい、尾張名古屋のお城というところには、どういうものか、徳川のお家の選《え》りすぐった宝という宝がよせ集めてあるようなあんばいでございますな。大阪の城から取って来た、太閤様のエライ品物はお江戸には置かず、みんな尾張の名古屋にしまってござるというのは、権現様の思
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