お旗本にはお旗本の貫禄があるということも、子供心に納得はしているらしい。だが、ここの殿様は、何という殿様――何様のお屋敷とたずねられては一方《ひとかた》ならず迷う。重代の屋敷地ならば知らぬこと、ここへ来たのは昨年であり、御門には表札もなければ、誰もまだ熟したお邸名《やしきな》を呼んでいる者はない。染井のあの屋敷ならば、その以前から人は化物屋敷の名に恐れているが、ここの屋敷には、先住が越して空屋となっていること久しく、呼びならわしたなんらの邸名が無い。
「ここんとこの殿様には、目が三ツあるね」
 先日、平身低頭していた凧の持主が、突然にこう言い出すと、
「ああ、本当だよ、眼が三ツあるよ、一つはここんとこのまんなかにあって、錐《きり》のような形をしていたよ」
 眼が三ツある殿様。普通の眼のほかに、錐のような眼が、額のまんなかに一つついていて、総計三ツある。
「じゃあ、三ツ目錐の殿様と、おいらたちで名をつけようじゃねえか」
「三ツ目錐の殿様――よかろう」
「いいかえ、では、ここの殿様は三ツ目錐の殿様、このお邸は三ツ目錐の殿様のお邸っていうんだなあ」
「ああ、そうきめちゃおう」
「きまった、き
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