ょう。
 それの因縁は、先日のある日のこと、子供らが凧《たこ》をひっかけたのを取ってやったことに原因して来ているようです。子供たちもようやく狎《な》れ睦《むつ》ぶの心を現わして、
「ここんちの親玉は、こわい面《かお》をしているけれど、本当は怖くないよ」
「悪いやい、親玉なんていうのはよせやい、こんな大きな、豪勢なお屋敷だろう、殿様だよ、きっとお旗本の殿様なんだぜ」
と、たしなめる。
「殿様――殿様にしちゃあ、家来がすくねえのう」
「殿様の御隠居なんだろう」
「御隠居――それにしちゃあ、年が若《わけ》えのう」
「だって、ただのさんぴんじゃ、こんなお邸は持てねえや、殿様だよ、殿様にしておかねえと悪いや」
「殿様? ほんとうに殿様か知ら、じゃあ、加賀様かえ」
「馬鹿――加賀様は百万石だ、殿様だって、ここん殿様あ、そんな大名と違わあ」
「じゃあ、何て殿様?」
「殿様は殿様だが、お旗本だよ」
「お旗本の何て殿様なの――」
 こうたずねられて、悪太郎の兄《あに》い株が少しテレているのを見る。
 百万石の殿様でないことはわかっている。お旗本の殿様だと仮定してみる。百万石必ずしも大ならず、小なりとも、
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