中の深い谷に身を投げて死んだ――だが、かりにこれをお銀様の身に比べて、妹に恋の全部を奪われた身になった時、果してお銀様が内外共に、なんらの呪詛《じゅそ》と反抗の形式を外に現わさずに、わが身を殺すだけで甘んじ得られるかどうか、そこはわからない。だから、磐長姫の名を筆頭に上げたからといって、それが真の同情か、真の共鳴か、或いは充分の憐憫《れんびん》と軽蔑とが含まれているのか、それはわからない。
その次にお銀様は「須勢理姫《すさりひめ》」の名を書いている。
この女性は、神代に於ける第一の艶福家|大国主命《おおくにぬしのみこと》のために、嫉妬の犠牲となった痛ましい女性である。お銀様はこの女性の名を書いたけれど、嫉妬のどこに同情があるか、またこの女性のように、嫉妬の立場に置かれて、自分が命との間に出来た子を木のまたにくくりつけて置いて、姿を消してしまうほどに無執着になれるかどうか、わからない。また一概に須勢理姫を、悪女の中に入れてしまった標準のほどもわからないが、ただ、嫉妬その事だけが、悪女の最大資格の一つと認定してしまった独断かも知れない。
それより、やんごとなき身で、実の兄妹で深い恋に
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