のもないらしい。
これを突きつけられた老石工が、圧倒的に、驚愕と狼狽を与えられたほかに、文句の出しようがなかったのも無理はありません。
それを立てつづけにお銀様は、多くの石刷や、絵像や、堂塔の図面の類を持ち出し、石質がこうの、台座がああの、飾《かざ》り文《もん》はこれを参酌しろのと、あらゆるものを老石工に向って押しつけてしまいました。
かようにお銀様の高圧的な提出の上に、お銀様の家の実力と、多年のお出入りの恩顧というものが、老石工をして、否の応のを申し立てる余地のないことにしているのは申すまでもありません。
委細を了承して、老石工はひとまず辞して帰りました。
それから後、お銀様の屋敷の一角に、石材工場が設けられ、右の老石工が数名の助手をつれて、そこに詰めきりになったことは、まもないことでありました。
三十二
こうして、スフィンクスのプランと、工事の進行とを、遮二無二おしかたづけてしまったお銀様は、次に何を為す?
先日の火事に、藤原の家の焼け残ったもののすべてのうちに、文庫がある。
この文庫に没頭したお銀様が、更に記録の上から調べ物にかかりました。
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