父以上の暴君であるこの姫君の命令に、小作連が否《いな》やを唱えるはずはない、農林牧馬の仕事はさし置いても……
ただ一つ、取柄なことは、この暴君は、父に比して人使いが荒い代りに、金払いが極めてよろしいということです。大抵、今まで、この姫君から命ぜられた課役《かえき》に対し、それを完全に仕遂げた時は、通常の労銀の二倍は下し置かれることが例になっているから、迷惑の色は、報酬の艶を以て消し去らるるのを例とする。
果して、その日から、ここに新たな土木工事が起されました。
本宅の再建工事を監督している父の伊太夫が、遥《はる》かにこれをながめて、苦りきった面《かお》をする。
だが、何の目的のために、何の必要あっての工事か、それは問わないことにしている。
三十一
それから数日の間、お銀様が面を見せなかったのは、引籠《ひきこも》って、塚の上に立てられるべき、なんらかの建設物のプランを立てていたものだとも考えられる。
果して、数日を経て、使の者が甲府の町に向って飛ばされました。
それに応じて、使者ともろともに召し出されたのは、甲府で名うての腕利きの老石工でありました。
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