のことのほか強い彼。ましてこのたびは、尊敬すべき道庵先生のために、忠実なる従者であり、勇敢なる用心棒である上に、道中は、どうかすると、素行の上に於て、監督者としての役目をも、負わさせられている米友。いつも張りきった心と、油断のない目をみはっていたのが、今は珍しくこの稚児桜の下で眠りを催し、つい、うとうととして夢に入ってしまいました。
 このくらいの余裕はあってもよろしいし、なければ米友としても、やりきれない。それに今日は、老巧にして如才のないお数寄屋坊主の玉置《たまき》氏が、道庵の身の廻りには、附ききりで周到な斡旋を試みているし、ところは、この寺の奥殿の中に封じこめて、その下足は、確かに自分が保管して来ている。どう間違っても碓氷峠《うすいとうげ》の下で、裸松のために生死《いきしに》の目に逢わせられたり、木曾川沿岸で、土左衛門の影武者におびやかされたりするような脱線のないことは保証する。まかりまちがったところで、それは平《ひょう》を踏みはずし、仄《そく》を踏み落して、住職や、有志家連をして、手に汗を握らしむる程度のものに相違ないから、その点の安心が、米友をして仮睡《うたたね》の夢に導いた
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