》頃から出て、暮方になって家に着く――主として熱田西浦東浦に行われる風習を、今日はどうした風の吹廻しか、城下の大路へ持ち出したものと見えます。
これは、時にとってよい見物《みもの》で、道庵をいたくよろこばせました。
思わぬ道草で時間をとり、広小路から末広町を通って、若宮裏へ廻って、門前町へ出で、それから少し行き過ぎて、後戻りをして、樅《もみ》ノ木《き》横町から、ようやく亀岳山万松寺の門前に着きました。
道庵がお数寄屋坊主の案内で、庫裡《くり》から本堂へ案内されて行く間、米友は草鞋《わらじ》をとらず、外に待っている。
ここでも多分、特別待遇をこうむることと思われる道庵。それを待つ間の時間はかなり長いものと観念した米友は、その間、彼はこの寺の境内をうろつき歩いてみる気になりました。
二十七
万松寺の境内を一わたり歩いて、白雪稲荷《はくせついなり》の前に来て稚児桜の下に、どっかと坐りこんだ米友は、しきりに眠りを催してきました。
ついに、うつらうつらと、桜の根を枕にして、うたた寝の夢に入ったのは、米友としては、稀有《けう》の例です。いつもゆるみのない彼、責任感
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