うんざりしたと見えて、
「友様やあーい」
「おーい」
「どうだ、出かけようじゃねえか」
 一から十まで承知しているような面《かお》をしながら、その実、頭も尻尾も一向なさか[#「なさか」に傍点]のわからない道庵先生に向って、お数寄屋坊主が、今の元服加儀の行列のいわれを、説明していうことには――
 毎年の初午《はつうま》には、熱田西浦東浦の若い者が元服する。その加儀として、去年元服した若い者を請待《しょうだい》する――招待された客は、おのおのに箱提灯《はこぢょうちん》を持たせ、髪も異様に結い廻し、すべておかしき形を旨として出立する。
 その時、亭主の方よりお取持の者が大勢出で、客の前後に従い、案内をする。その行列はさながら蟻の歩むが如く、我儘《わがまま》の言い放題で、取持を困らせるのを例とする。ただいま実見した通り、小石一つ見つけても大きな山があると言い、水のこぼれたあとを見ては、深い河があって渡れないと言う。その度毎に、あの通りの騒ぎで、大勢寄ってたかって、石を掘り取り、木遣《きやり》で送り出し、水は大仰にかいほすやら、橋をかけるやら――万事この調子で、道のり四五町のところを、正午《ひる
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