第一、あの気取り方をごらんなさい。
 突袖をして、反身《そりみ》になって、あの四方窓から中原の形勢を見渡したキザな恰好《かっこう》をごらんなさい。天下の英雄、使君、われといったような得意ぶりを御覧なさい。
「これはいい、全く中原の形勢を成している、英雄起るところ山河よし、とはこの事だ。第一、せせっこましいところが無《ね》え、中原が開けて、海が近く、山が遠い。信長の野郎も、秀吉の野郎も、こんなところで生れたから、人間がこせこせしていねえ。濃尾の平野が遠く開けて、木曾川がこんこんとして流れ、山はあれども無きが如し、出っぱったところが岬で、引っ込んだところが港だ」
と大きな声で言いました。
 濃尾の平野遠く開けてはいいが、木曾川がこんこんとして流れという、その、こんこんという字は、どれを嵌《は》めたら適当か。山はあれども無きが如し――という一句に至っては道庵式の形容で、ちょっと凡慮に能《あた》わない。
「どうだ、友様」
と言って後ろを顧りみたところに、影の形に於けるが如く宇治山田の米友が控えていたのだ。
 天下の英雄は、道庵ひとりではなかった。
「うむ、すてき[#「すてき」に傍点]だな
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