「全く、すてきだろう」
 米友も同じように、眼を円くして、その雄大なる中原の形勢と、道庵のいわゆる、有れども無きが如くなる遠山をながめている。
「この通り、英雄起るところ山河よしといってな、こういうところから英雄というやつが出るのだから、よく見ておきな。それ、このあいだ、見た信州の松本の深志の城というのがあるだろう、あれからながめたところの風景と、これとは同じ城でも大きに趣が違うだろう。あの城に上って見ると、周囲は皆ことごとく高山峻峰だ、山ばかり屏風《びょうぶ》のように立てこんでいたろう。それがここへ来ると、どうだ、気象とみに開けて気宇闊大《きうかつだい》なりだろう、規模が違うだろう。つまり、武田信玄と、豊臣秀吉の相違さ。なにも山国から英雄が起らねえときまったわけのものではねえが、山国には山国らしい英雄が起り、平野には平野らしい英雄が起るのだ。実際、この尾張というところは、信長を産み、秀吉を産み、頼朝を育て、その他、加藤の清《せい》ちゃんも、前田の利公《としこう》も、福島の正《まさ》あにい[#「あにい」に傍点]も、みんなこの尾張が出したんだ。そういうふうに昔は英雄豪傑の一手販売みた
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