り出して、
「近代の具足では、この決拾というやつはあんまり使わないらしい。馬上に弓の場合だな。これも左が先、右が後……すべて甲冑の着用には左を先にすることが定法《じょうほう》になっているのだ。さあ、この次は籠手《こて》だ」
 鉄にかなりの時代のある筒籠手を引っぱり出した仏頂寺は、二三度ひっくり返して、
「さあ、これが本当の小手調べだ、どっちが左だい……そうか、まあ、こんなことでよかろう、この辺でお茶を濁しておけ」
 一応、籠手《こて》をつけ終った後に、脅曳《わきあい》、胴を着けて、表帯《うわおび》を結び、肩罩《そで》をつけ、
「これから両刀だ、これは御持参物を以て間に合わせる」
と刀をさし、次に職喉《のどわ》、鉢巻、頬当《ほおあて》から兜《かぶと》をかぶり終って一通りの行装をすませて、ずっしずっしと室内を歩み出し、
「どうだ、武者ぶりは……」
「天晴天晴《あっぱれあっぱれ》――元亀天正時代ならば押出しだけで差当り五百石の相場はある」
 丸山勇仙がほめる。と、仏頂寺弥助は長押《なげし》にかけた薙刀《なぎなた》を見つけて、
「槍にしたいものだが、薙刀じゃ少し甲冑につりあわんけれど……」

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