く、数町を隔てた彼方《かなた》から、声を合わせて歌う声がする。ははあ、お日待ちのくずれだと、さいぜん男衆が言ったな、くずれだか、かたまりだか知らないが、寺か、お堂の広間を借りて人寄せがあるな。
 こんなことを思いやって、閑なるこの浴室。
 窓の外の雪を見ていると、不意に引戸がガラリとあいて、甚《はなは》だ荒々しい人の足音。同時に裸体を現わした甚だ大きな漢《おとこ》と、さまで大きからぬ男。
 兵馬は、これを一目見て、ほっと、舌を捲いてしまっていると、先方が、
「やあ、いたいた」
 無遠慮を極めて、兵馬の前に裸体のままで立ちはだかって、
「やあ……」
 兵馬が、ほとんどおぞけをふるってしまったのは、この二人の亡者、それが別人ならぬ仏頂寺弥助と、丸山勇仙であったからです。
 二人は、舌を捲いている兵馬を、まともに見下ろしながら、ズブリと兵馬の左右へ飛び込んで、
「占《し》めた、占めた、もう逃げようとて逃がすまい」
「いったい、どうしたのだ」
 兵馬が呆《あき》れ返って問い返すと、仏頂寺がニヤニヤと笑いながら、
「あの日に、君を出し抜いて、我々二人は先発してな、檜峠まで来てみたのだが、はっと思
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