運であるように思いました。
 だが、同時にまた前途のことが思われないでもない、これから高山までは八里の路、これは、ほとんど山坂のない平坦な道だとは聞いたが、何といっても名にし負う飛騨の国、雪の程度によっては、交通が杜絶《とぜつ》しないとも限らぬ、どのみち、この雪の降りあんばいを見るべく、今日の出発を見合わせよう。
 食前に、昨夜の風呂場へ行って見ると、これまた意外。
 外は、この通り天候険悪であるのに、広くもあらぬ浴槽の中は全くの満員――芋を揉《も》むというけれども、桝《ます》の上に芋を盛ったと同じことに、全く身動きもできない老若男女が、ギッシリと詰まっていました。
 しかしながら、桝に盛られたこの立錐《りっすい》の余地なき人間の一山は、それを苦にもしないで、盛られたままに歌うもあれば騒ぐもある。それで、あとから来るものが必ずしも、その光景に辟易《へきえき》せず、傍へ寄って来て、お茶を濁している間に、いつか知らず、その立錐の余地もない中へ割り込んでしまって、親芋子芋の数になってしまう。
 そうして、別段、ハミ出されたものもないらしいから、あのギッシリ詰まった一山の中へも、入れば入れるも
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