がかえって興にのり、
「左様でございますとも、長く御逗留なすっていると、そのお化けにひきこまれなすったかも知れませんが、早く引上げておいでなすったから、お化けも御挨拶を申し上げる暇がございませんで結構でした、後家さんや、浅公なんぞも、早く切上げて来れば何の事はなかったのに……」
 それから、一槽の者が、その飛騨《ひだ》の高山の淫乱後家なるものと、男妾の浅公なるものとについての噂を、蒸返し、蒸返し、それにまたまた尾ヒレがついて、この湯槽の中は、その風聞で持ちきりになりましたから、兵馬も思わず興味をもって、これに耳を傾けさせられています。
 聞いていると事実はこうです、飛騨の高山の穀屋《こくや》という金持の後家さんが、箸にも棒にもかからない淫婦で、めぼしい男を片っぱしから引っかける、それがこの夏中から、男妾の浅公というのを引きつれて、白骨の温泉で、うだり通しでいたこと、こっちから行ったものも大分当てられて来たが、淫乱後家の白骨に於ける威勢の程は圧倒的で、女王の形になり、御当人も面白くって、はしゃぎ通し、思う存分の享楽をして、帰ることを忘れてしまったらしく、この冬を通して白骨に籠《こも》ると
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