のうちの二三の浴客とは、忽ち話敵《はなしがたき》となりました。それは高山あたりから来た、新婚らしい夫婦者、それから近在のお婆さんと、病気がありそうにもないに湯治だと言っている四十男、それと家の番頭、雇人、それらが、すべて隔てのない混浴でした。
 兵馬が白骨から来たと聞いて、その四十男が、好事《こうず》な眼を向けて、
「白骨じゃ、このごろ、お化けが出るって評判ですが、本当でござんすかね」
と言いました。
「お化け、そんな話は聞かなかったよ――」
 兵馬が答えると、
「こちらでは、もっぱら、そんな評判でございましたよ」
「ははあ、冬籠《ふゆごも》りの人も二三いるにはいましたけれど、お化けのことは誰も言いませんでした」
 人からお化けと問いかけられて、はじめて兵馬は、なんだか白骨の思い出に、寒さを感じたようなものです。
 その事。兵馬自身こそお化けにはつけつ廻されつしているではないか、仏頂寺、丸山の亡者はいわずもあれ。
 そのほかに、何が白骨にいたか。何にもいないから手を空《むな》しうして、こうしてやって来たのだが、さていたかと言われてみると、考え直してみたくなる。
 ここ、平湯で、平々淡々
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