は兵馬にとっては、かなり重い公案のようなものですけれど、兵馬は往々、ふいにこんな公案にひっかかって、分相応の頭を練りながら、旅路を行くこともあるのです。
ほどなく兵馬は、平湯の温泉に着きました。
ここは白骨と違って、周囲の峡間も迫ってはいず、田野も相当に開けて、白骨のように宿屋一軒がすなわち峡間の一部落をなすというようなわけではなく、数十戸の人家が散在して、人里の気分豊かに猟犬の声も相和する、至極穏かで平らかなところだと感じました。
そこの「水石《すいせき》」という宿で草鞋《わらじ》をぬぐ。
浴客も相当にありました。
二三日は、とにかく、ここで落着いて、これから当然、この国の首都、高山の町をおとずれて、尾張方面へ行く、それに順路を取ろうとする。
自分の通された宿の座敷に、鎧櫃《よろいびつ》があって、具足《ぐそく》が飾りつけられてあることに、兵馬は、ちょっと好奇心を起し、まず長押《なげし》にかけられた薙刀《なぎなた》から取って、無断に御免を蒙《こうむ》って、鞘《さや》を外して見たけれども、錆《さ》びてはいるし、さのみ名作とも思われませんでした。
だが、素朴な湯槽《ゆぶね》
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