契《ちぎ》りし罪の報い来て、いける地獄に堕ちにけん、世に薄命なる女子《をなご》はあれども、わが身に増るものあるべしやと、過来《すぎこ》しかたを胸にのみ、思ひぞくらす秋の山に、牝恋《つまこ》ふ鹿もうらめしく、まがきにからむ薯《いも》かつら、子にほだされて捨てかねし、身のなる果《はて》をあはれ世に、訪ふ人絶えてなかりけり。畢竟《ひつきやう》お夏がこの窮阨《きゆうやく》の、後のものがたりいかにぞや、そは次の巻に解分《ときわく》るを聴ねかし……」
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 北原は、眼の落つるところに、一気にこれだけの文字が触れたものですから、一種異様な気分に襲われました。

         十九

 北原賢次は美少年録の件《くだん》のくだりを見た瞬間に、ちょっとそんなような気分に襲われ、ずっと膝先を炬燵《こたつ》の方に突き入れて、斜めに竜之助の方を見ながら、
「お目が不自由ではいちばんいけません、そこひ[#「そこひ」に傍点]ででもございましたか」
「いいえ、怪我をしたのがもとで、ひどい目に逢いました」
「中途から見えなくなったのが、いちばんいけないそうでございますね」
「それが全くいけない
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