看病の大病人というのに、さわりはないか知ら」
「ところが、それをたずねてみるとね、病気のせいか、なかなかきむずかしやだから、もしか失礼に当ってはなんて、お雪ちゃんが言うものだから、御病気は知っていますがな、あの笛の音では……あの尺八の気力では、そう今日明日というような御病体でもなかりそうだし、日増しによくなってくるような音色じゃないか、とそのことを言ってやると、お雪ちゃんも、拒《こば》みきれないという様子だった」
「うむ、問題のあの尺八な」
「それそれ、あの尺八の主がすなわち、お雪ちゃんの侍《かしず》いている大切の病人なのだ」
「いったいあれは何者なのだい、正体がわかったかね。最初のうちは、単に病みほおけた親爺《おやじ》さんかなにかだろうと、我々の間でもタカをくくっていたのだが、短笛の主の見当がそれと定まってから以来の、大きな疑問じゃないか――それを聞いてみたかね、お雪ちゃんに」
「それは聞かない、聞かないけれども、あえて聞く必要もないじゃないか――最近にその人を見ることができるんだもの」
全くその通り、あの尺八の音が聞え出してから、やや暫《しばら》くあって、この炉辺閑談に集まる人も
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