いから、あれに列席してみると、席の空気もわかるし、滞在客の性質もわかるのだ。それらについて、知り得るだけは知って置いても害になることではない――兵馬はそう思案したものだから、今日はひとつ、これから炉辺閑談の席へ、進んで出席してみようとして、一通り衣裳をつけました。
そうして、袴《はかま》をつけるまではないが、刀と脇差は、持って行こうか、行くまいかと思案し、それも物々しいし、丸腰も本意でないようだから、脇差だけを差して行こうと、その通りにして、二階から徐々《しずしず》と炉辺をさして下りて行きます。
この時、炉辺閑談の席は、鐙小屋《あぶみごや》の神主の退却した時を以て一次会が終り、あとは閑散のやからが残席を守り、或いは長々と炉辺に寝そべって、頬杖《ほおづえ》をつきながらだまり込んでいるのもある。
つまり、池田良斎一行の北原と、それから留守番のおやじと、村田寛一と三人だけでしたが、三人とも、いずれも、だまりこくって、炉辺を囲んでいるところへ兵馬がやって来ました。
「さいぜんは、神主さんが見えたとやらで、お招きを受けましたが、少し用事があったものですから失礼しました」
「いや、どうも。ま
前へ
次へ
全157ページ中93ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング