もりで、兵馬は息をついたが、この厄介払いで、ここまで見込まれた以上は、これから以後のことが想われる。
 この二人の亡者共に、つけ廻されてはたまらないから出し抜くに限る。出し抜いたからとて、影の形における如く、離れっこはないから、絶縁を宣告するのも無益である。しかるべき時刻を見て、無断にここを出立してしまうことだ。
 その時刻は、いつがいいかな。永くここに逗留《とうりゅう》している必要は更にないのだから、明朝あたりがよかろう。それとも今晩、月夜ででもあれば、彼等を出し抜いてしまってやろう。そうして、ともかくもまた一旦松本へ帰るのだな。
 いや、待て待て、せっかくここへ来た以上は、ここで知り得るだけのことは知って置かねばならぬ。
 ちょっと一夜めぐりをして、尺八の音に驚かされて帰るだけでは、どうも冥利《みょうり》が尽きるようだ。
 とにかく、一応は、何人の人たちがこの宿にいて、それのおのおのの住所、氏名、族籍というようなものまで、一通りは当りをつけて帰らぬことには、偶然にしても、偶然を利用することが足りない。
 よし、かりに宿帳を見せてもらおう。
 それに、随時、あの炉辺閑話が開かれるらし
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