う。何だか耳もとで茂太郎の声がするようでならぬ。
その時、どっと下の方で笑い崩《くず》るる声がしました。ああ、そうそう、今日は珍しく鐙小屋《あぶみごや》の神主さんが来られたそうで、廊下で先ごろ北原さんから案内を受けたが、行く気にならないものだから御無沙汰《ごぶさた》をしてしまった。
あの晴れ晴れした、賑やかな神主さんが、座持《ざもち》で話をしていれば、一座が陽気になるのも無理はない。ああして、さも愉快そうに笑い崩るる声。下の明るい賑やかさ。
それを聞いて、いつもの自分ならば、駈けつけて行っても、仲間になりたいほどのものを、なんだか行きたい気が起らないのみならず、人々の笑い崩るるのが、どうやら呪《のろ》わしいような心持になって行く自分はどうしたものだろう。気が進まない。
お雪は、晴れ晴れしい神主のことから、かえって暗い気持を、自分の胸に感得しました。
ああ、いやいや、あの賑やかな神主さんを思うと、その裏には、あの死神にとりつかれた浅吉さんのことを思う。締め殺しても死にそうもなかったイヤなおばさんのことを思う。その二人のいずれもが、なんとも原因不明な死様《しにざま》をしてしまった
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