して宿屋の間毎間毎を探し試みているうちに、蒲団《ふとん》の塁《とりで》の中で見つけなくてもいい仇《あだ》し女を見つけてしまいました。それが縁で、今はその女をも何とか先途《せんど》を見届けてやらないことには、自分の良心にやましいような事態となりました。
そこで、まだややものうい身体を運んで、片手には一刀を携え、そうしてこの間毎間毎を忍びやかに探りながら来たのではあるが、一体に人間臭の無いことは中房以上です。
兵馬はさもあるべきことと一巡しながら、廊下を半ばまで来た時分に、短笛の音《ね》が起りました。尺八の声です。実は前の晩も、この尺八の声に引寄せられて来たような姿でした。それが今、不意に、しかしながら、極めてしめやかに起ったのは、つい自分の行手の、鍵の手になった廊下の奥の一間からであります。
この物音に、兵馬が足を踏みとどめました。
それが何の曲ということを、兵馬は知らない。
ただ第一に、気を取られたのは、心なく、人の清興を妨げてはならないということでした。
第二に、少なくともこの場合、自分の行動が紳士的でないというようなことを考えました。つまり、無下《むげ》に来るべきところ
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