のところへ来て、ピグミーが抱きついて、かなり増長した語気を以て挑《いど》み立てたものですから、竜之助が軽くその刀を一振り振ると、
「あっ!」
といってピグミーが、二つになって、壁に向って飛びました。
 見ると、正面の壁の面《おもて》に、蠑※[#「虫+原」、第3水準1−91−60]《いもり》を二つに斬ってはりつけたように、ピグミーの身体《からだ》が、胴から上と、下と、一尺ばかり間隔をおいて、二つになって、へばりついています。
 はりついた当座は、ピクピクとして少しばかり動きましたけれど、そのまま寂然《じゃくねん》として、墨汁で点じたもののように、壁にくっついたきりです。
 ちょうど、その時分、長い廊下で人の足音がしたようですから、竜之助はその足音に耳を傾けました。
 廊下の足音は非常に緩慢なもので、且つ忍び足に違いないから、この場合、この人だから、それに耳を傾けたものでしょう。だが、たしかに人が忍んで来ると、こう感づいたのはぜひもないことです。と同時に竜之助は、それがお雪だなと思いました。
 お雪が忍んで来て、ここで泣く――それは今宵に始まったことではない。
 お雪の絶望に似た泣く音《ね
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