》を、夢うつつの間に竜之助が聞くのも、耳新しいことではない。
その時、またしても、不意にピグミーが襲いかかって来ました。
これより先、二つに斬られて壁にへばりついていたピグミーが、またピクピクと動きはじめたと見れば、いつのまにかそれが一つになって、壁から真一文字に飛んで、再び刀の物打のところへしっかりとかじりつき、
「ね、足音がするでしょう、いつもの足音とは違いますよ、いつもの足音は、一筋にこの部屋へ向いて忍んで来たでしょう、今度のは、あれ、ああして、一間一間をのぞいて歩いて来ますよ、この三階だけでも三十幾間かあるでしょう、それをいちいちああして、忍び忍びに様子を見ながら、だんだんこちらへ近づいて来る者がありますよ、若い人です、男ですよ、刀を差しています、どのみち、やがてここへやって来ますよ、ここへ来たら事です、さあ、御用心なさい、御用心」
小うるさい! 再び竜之助が刀を振ると、ピグミーはまたも二つに斬られて、壁へ行ってヘバリつきました。
と同時に行燈《あんどん》が消えて、室は真の闇。
七
座敷が暗くなってから暫くして、短笛の音がこの一室から起りました。
前へ
次へ
全157ページ中49ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング