風流も解する人だ。旅客で、悪客と隣するのと、好客と泊り合わせるのとは、非常な幸と不幸とであると、兵馬はそんな感じを受けながら見ると、女文字の和歌には、どれにも「雪」という名がしるしてあります。

         六

 同じ日の夕方、机竜之助は、炬燵《こたつ》を前にして、端然と腕組みをして首低《うなだ》れていました。
 この時は、九曜の紋のついた黒の衣裳で、髪かたちも、さまで乱れてはいず、膝は炬燵の中へ入れないで、さながら、お行儀よくお膳に向った時のような姿勢で坐っています。
 尺八は少し離れたところの机の上にあって、膝のわきには二本の刀が、これも瀞《とろ》につながれた筏《いかだ》のようにおだやかに、一室の畳の上に游弋《ゆうよく》している。
 このごろは、お雪も、久助も、あまりこの室へはおとずれないらしい。
 それは、この室の主人がそれを好まないせいか、或いは二人が、なるべくこの人に遠のいていた方がいいと感じたものか、どうかすると、どちらも、その存在を忘れてしまっているのではないかと疑われることさえあります。
 それでも、一日に一度は思い出したように二人のうちの誰かが、おとずれて見る
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