が描かれて、上に一茶調の俳句が題してある。
 大体、そんなような戯画《ざれえ》と楽書《らくがき》で、ほとんど巻の大半がうずめられていたが、そのうちで兵馬が異様に感じたのは、ただ一つの女文字が所々にはさまれて、それは多くは歌が認《したた》められている。
 歌のことは兵馬にはよくわからないが、手はなかなかよく書いてあると思いました。全くの素人《しろうと》では、なかなか色紙《しきし》、短冊《たんざく》に乗らないものだが、この女文字は板についていると感じました。
 歌も一通り読んでみましたが、いずれも白骨温泉の生活を中心としたもので、山岳をたたえたものもあり、浴中の人事をうたったものもあり、長いのもあり、短いのもあるが、いずれも兵馬の感心するものばかりです。
 そうして、どれも最近の墨の香《か》がするから、この夏の末に去った人ではない、現にここにいる人のうちの筆のすさびに相違ない、とすればこの女の人は、さいぜん親切に自分を介抱してくれた娘さんだ、あの人に違いない。
 宿の娘ではないし、誰か連れがあって冬籠《ふゆごも》りをする逗留《とうりゅう》の客に違いない。その連れはいずれも相当の教養もあり、
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