縦覧を惜しまれている東南部、針木、夜立、鹿島槍、大黒の山々、峠でさえも、東北の方、戸隠、妙高、黒姫等の諸山までも、おのおのその個性を備えて、呼べば答えんばかりにではない、呼ばないのに、千山|轡《くつわ》を並べ、万峰肩を連ねて、盛んなる堂々めぐりをはじめました。
天際と、地軸の間を表に真黒な沈黙、裏に烈々たる火炎を抱いて動き出したそのめざましさに、二人は驚動しました。
「ああ、山という山が、みんな集まって来るではないか」
「山がみんな集まって、何をするのでしょう」
「何をしでかすかわからない」
「あれ、富士山が――大群山《おおむれやま》が、丹沢山が、蛭《ひる》ヶ峰《みね》が、塔ヶ岳が、相模の大山《おおやま》――あれで山は無くなりますのに――まあ、イヤじゃありませんか、大菩薩峠までが出て来ましたよ」
「大菩薩峠が……」
「そらごらんなさい、相模の大山から、ちょっと、こっちの方、武蔵の三《み》ツ峰山《みねさん》までの間に、ちょっと凹《くぼ》んだところが見えましょう、あれが大菩薩峠の道でなくて何でしょう」
「そんなところまで、よくお前にはわかるねえ」
「わからなくてどうしましょう、わたしは、
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