「まあ、この花の色をごらんなさい、ありとあらゆる花が、ここに咲いているではございませんか。色という色がみんなここにこぼれているようでございます。これは百合に似た花でございますが、紫の濃いところが違います。こちらをごらんなさい、花も、葉も、枝も、すっかり白天鵞絨《しろびろうど》ではございませんか。これはまあ、真黄色《まっきいろ》! こんな大きな梅鉢草《うめばちそう》! これは石楠花《しゃくなげ》と躑躅《つつじ》の精かも知れません。白蓮華《びゃくれんげ》……とでも申しましょうか、この白さの深いこと、可愛いじゃありませんか。この十坪ばかりのところは、すっかり桜草の一族で固めて、他人を入れまいとしておりますよ。どれを見ても、これを見ても、色のよいこと――それもそのはずです、この高いところで半年の間、この真白な雪で研《みが》かれたんですもの、下界の花とは色の深さが違います、強さが違います、位も違うのは仕方がありません」
 空間のめざましさに、眼をさました竜之助は、地上の美観にも目を奪われないわけにはゆきません。なるほど、これがお花畑。人間の手で作れない、雪と、氷と、高さとの力で作られた、天然の
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